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任意後見契約の締結能力があるかどうかの判断

任意後見契約の法的性質

任意後見契約は、任意後見契約に関する法律に基づいて締結される契約で、委任者が受任者に対して、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況となった場合の、以後の自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その代理権を付与する委任契約です。

意思能力

上記のとおり委任契約の締結ですので、任意後見契約の利用者である委任者には、通常の契約締結の場合と同様、契約締結の能力(意思能力)がない場合には契約締結はできないことになります。この契約の締結の前提となる能力(意思能力)とは、自分の行為の結果を認識・判断できる精神的能力のことです。

任意後見契約の締結を検討するのは高齢者が多いため、すでに認知症等の症状が出ていることもあります。そのような場合には、意思能力があると認められるかどうかについて慎重な判断を必要とします。受任者としては任意後見契約についての打合せを委任者と行う中で、自分の行為の結果を委任者が認識・判断しているかどうかを確認する必要があります。

公証人による判断

任意後見契約は公正証書によってしなければなりませんので、公証人に委任者と打合せをしてもらい、委任者の意思能力について任意後見契約締結の可否を判断してもらうのも1つの方法です。

しかしながら、公証人は法律の専門家ではあっても、医療の専門家ではありませんので、万一、委任者の意思能力の有無について後日紛争が生じた場合には、公証人に確認してもらったからといって必ずしも有効と裁判所において認められるかというとそうではありません。

そこで、公証人が任意後見契約の公正証書を作成するに当たっては、本人の事理弁識能力や契約締結の意思を確認するために、本人との直接の面接を原則としており、また、その事理弁識能力に疑義がある場合には、後日訴訟や審判で任意後見契約の有効性が争われた場合の証拠とするため、

  • 本人が意思能力を有することを証明する診断書等の提出を求め、これを公正証書の原本とともに保存する
  • 本人の状況等の要領を録取した書面を証書の原本とともに保存する

などの措置を行っています。

診断書を要する場合

上記のように委任者の親族(特に法定相続人)などから、委任者の能力や契約締結の意思が争われ任意後見契約の有効性について異議が出るなどして、紛争の発生が予想できる場合もあります。このような場合には、後日の紛争を避けるために、契約締結の直前に、医師から委任者の意思能力についての診断書・意見書等を取得しておくことが有効です。

意思能力について疑問がある場合、あるいは紛争を生じがちな場合というのは、すでに認知証の症状が出ている場合が多いのです。そのために、意思能力がなかったから、任意後見契約は無効であり、これに基づく財産処分は無効である、というような主張が出てくることになります。

このような場合には、すでに専門家の医師が担当医として治療にあたっている場合も多いので、この担当医の協力を得ることになります。

仮に、このような担当医の協力を得ることができないような場合や、そもそも専門の医師にかかっていないような場合には、専門の医師の意見書を準備するよう努力する必要があります。

しかし、契約締結能力が疑われる者(委任者)と、多岐にわたる項目について複雑な内容の任意後見契約を締結し、包括的な財産管理権を授与されることが適当でない場合もありますから、能力の減退が著しい者との間で任意後見契約を行うこと自体、そもそも慎重であるべきといえます。

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