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任意後見制度のしくみ(2)

任意後見契約の類型

任意後見契約の利用形態は、下記のように、将来型・移行型・即効型の3種類に分かれています。

将来型

将来型は、任意後見契約の締結時点では受任者に財産管理・身上監護等の事務の委託はせず、将来自己の判断能力が低下した時点ではじめて任意後見人による保護を受けようとする契約形態です。

本人に十分な事理弁識能力がある時点で契約を締結することにより、事理弁識能力が不十分になった後の任意後見人をだれにするか、そして、どのような事務を委託するかなどについて本人自身の希望・自己決定を尊重しようとするものであり、任意後見契約に関する法律の趣旨にもっとも即した形で利用される契約形態であるということがいえます。

移行型

移行型は、財産管理等を内容とする民法上の委任契約と任意後見契約の2つの契約を同時に締結することにより、本人の事理弁識能力が不十分となったときに、通常の財産管理等の委任契約から任意後見契約に移行する形をとる契約形態です。

つまり、契約締結時から本人が十分な事理弁識能力を有している間は、民法上の委任契約により任意後見受任者が本人の財産管理等の事務を行い、本人の事理弁識能力が不十分となり任意後見監督人が選任されたときからは、任意後見契約による財産管理等に移行するという契約形態です。

本人が、事理弁識能力が不十分とまではいかないまでも、高齢などの理由で財産を管理していくことに不安を覚えているような場合に、このような本人の気持ちをくみ取り、任意後見監督人が選任されるまでの財産管理等を適切に行うための契約形態であるということがいえます。

委任契約締結のポイント

移行型の場合、委任契約は任意後見監督人が選任され、任意後見契約の効力が発生した時点で終了することを前提としていますので、その旨の約定を委任契約中に定めておくことが必要です。

行政書士にご相談ください

  • 当事務所では、任意後見契約の公正証書を作成する場合には、上記のように本人の保護をもっとも手厚く行うことができる移行型にて作成しています(ご希望の場合は、移行型でなくてもかまいません)。
  • 当事務所では、「委任契約」「任意後見契約」に加え、「死後事務委任契約」についてもひとつの契約書の中でお作りしています。

即効型

即効型は、本人が軽度の認知証・知的障害・精神障害等の状況にあって、任意後見契約を締結後すぐに契約の効力を発生させる必要がある場合に用いられる契約形態です。この場合は、契約締結後すぐに、任意後見受任者などの申立てにより家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい、契約当初から任意後見人による財産管理・身上監護等が行われることになります。

軽度の認知証などによる補助や保佐の対象者であっても契約締結時に意思能力があれば任意後見契約を締結することができます。そこで、本人の事理弁識能力が不十分であるにもかかわらず、財産管理等を誰にどのように委ねるのかについて明確な意思をもっているような場合に、そのような本人の意思を尊重するために利用される契約形態であるといえます。

ただ、任意後見契約の締結には意思能力を有していることが必要なので、医師の診断を受け診断書を作成しておくなど、契約の締結に際しては本人が任意後見契約の内容を理解しているかなどの、本人の意思確認を慎重に行う必要があります。

また、最近は、いわゆる「濫用的任意後見の申立て」が問題視されています。法定後見開始の審判等の場合には裁判所が職権で成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)を選任するため、申立書に成年後見人等の候補者と記載された者が成年後見人等に選任されるとは限りません。そのため成年後見人等の選任について裁判所の介入を受けたくないと考える親族等が、本人の事理弁識能力が不十分であり既に補助や保佐といった法定後見の開始が相当であるのにもかかわらず、駆け込み的に任意後見受任者を選ぶことができる任意後見契約を利用し、任意後見監督人の選任を申立てるといった事案です。任意後見契約の登記がなされている場合には、財産管理について本人の意見を尊重しようという任意後見制度の趣旨を生かすために、原則として任意後見契約が優先され法定後見開始の審判等はなされないことを利用しようとするのです。

「濫用的任意後見の申立て」の事案においては、親族などにより本人の財産が恣意的に管理される危険性があり、もしそのような危険性が現実のものとなったら、本人の意思を尊重して財産管理者の選任を本人に委ねることとした任意後見制度の趣旨が悪用されてしまうことになります。また、判断能力が衰えた者との間で、複雑な内容にわたる任意後見契約を締結すること自体、疑問であるといえます。

そこで、即効型での任意後見契約を利用する場合には、それが「濫用的任意後見の申立て」に該当しないかや、複雑な内容にわたる任意後見契約を本人が理解することができるのか、などの事情を慎重に検討しなければなりません。もし、相当でないと判断した場合には、任意後見契約の締結は避けるべきであり、法定後見の申立てを検討すべきでしょう。

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