遺言書の作成
公正証書遺言の作成の仕方
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言は、公証役場(公証人)にて作成され、公文書としてその公証役場に保管される、もっとも確実で安全な遺言の方法です。遺言者は遺言したい内容を公証人に伝えればよく、あとは公証人が法的にきちんと整理された遺言を作成してくれます。
証人とともに公証役場に出向くなど、自筆証書遺言に比べると作成に多少の手間がかかりますが、家庭裁判所の検認が不要なので、結果として相続開始後の手続きは格段にスムーズです。
また、体力が弱ったり病気などで字が書けない人でも、公正証書遺言なら遺言をすることができます。公証人に自宅や病院まで出張してもらい、病床で作成することも可能です。
公正証書遺言の作成手続き
公正証書遺言を作成したい人は公証役場に出向くことになりますが、その前に、遺言したい内容を整理してメモにまとめておきましょう。公証人は遺言者の希望に沿った遺言となるように法的な見地からアドバイスをしてくれますが、その骨格は遺言者自身が決めなくてはなりません。
また、遺言の作成には2人以上の証人の立会いが必要ですので、適任者に打診しておきましょう。ただし、以下の人は証人になることができません。
- 未成年者
- 推定相続人・受遺者・これらの配偶者および直系血族
- 公証人の配偶者・4親等内の親族・公証役場の書記や使用人
証人には遺言の内容が知られることになりますので、信頼のおける人物に依頼することが大切です。もし知り合いに適当な人物がいない場合は、行政書士・弁護士などの専門家に依頼する方法もあります。行政書士・弁護士などの専門家には、業務上の守秘義務がありますので、遺言の内容を他人に知られる心配がありません。
遺言内容の方針が決まったら最寄りの公証役場に行き、公証人との打合せを行います。どこの公証役場でもかまいませんが、自宅などに出張してもらう場合は管轄区域が決まっていますので、事前に確認しましょう。
打合せは、遺言の内容にもよりますが数回になるのが普通です。必ずしも公証役場に毎回行く必要はなく、電話・ファックスなどでやり取りしながら打合せを進めていくことになります。
通常、遺言の文案はこの段階で作成されます。形式不備の心配は無用ですが、内容については連絡ミスなどから食い違いがないとも限りませんので、十分にチェックしましょう。
文案のチェックが済んだら、後は公証人と決めた遺言作成当日を待つのみです。証人にはその日にはじめて同行してもらうことになります。
当日は形式的な手順を踏むだけですので、さほど時間はかかりません。公証人が筆記内容を読み上げ、遺言者と証人がその内容を確認して署名押印します。そして、最後に公証人が署名押印すれば公正証書遺言が完成します。
公正証書遺言の作成費用
- 公正証書遺言に記載する財産の価額を、下表の「区分(目的の価額)」欄に当てはめて公証役場手数料を計算します。
種類 | 区分(目的の価額) | 金額 | |
---|---|---|---|
公証役場 手数料 |
0円 100万円超 200万円超 500万円超 1,000万円超 3,000万円超 5,000万円超 1億円超 3億円超 10億円超 |
100万円以下 200万円以下 500万円以下 1,000万円以下 3,000万円以下 5,000万円以下 1億円以下 3億円以下 10億円以下 |
5,000円 7,000円 11,000円 17,000円 23,000円 29,000円 43,000円 5,000万円ごとに13,000円加算 5,000万円ごとに11,000円加算 5,000万円ごとに8,000円加算 |
遺言加算 | 全体の財産が1億円以下の場合 | 11,000円を加算 | |
正本・謄本代 | ― | 1枚につき250円 | |
証書の用紙代 | 証書(原本)が4枚を超える場合 | 超過1枚ごとに250円 | |
遺言を取り消す場合の 公証役場手数料 |
― | 11,000円(財産の価額に応じた公証役場手数料の半額が11,000円を下回るときは、その額) |
- 不動産の場合は固定資産評価額により算定します。
- 土地については、1.4倍した額となります。
- 遺言により複数人に財産を相続・遺贈する場合
- 遺言は相続人・受遺者ごとに別個の法律行為となります。よって、各相続人・各受遺者ごとに相続・遺贈する財産の価額を算出し、これを上記の表に当てはめ、それぞれの公証役場手数料を求めます。その手数料の合計額が公証役場への支払額となります。
- 遺言加算
- 全体の財産が1億円以下の場合、「遺言加算」として1通につき11,000円が加算されます(相続人・受遺者ごとではありません)。
- 祭祀承継者の指定や認知などの場合の公証役場手数料は11,000円となります。
- 病気などにより公証役場へ行けない場合(役場外執務)
- 病院や自宅に公証人に出張してもらうこともできますが、その場合の公証役場手数料は遺言加算を除いた手数料額の1.5倍となり、これに遺言加算11,000円を加えた額となります。さらに公証人への日当(1万円、作成に4時間以上要した場合は2万円)と交通費が必要になります。
「公正証書遺言の作成の仕方」のポイント
- 公正証書遺言は最も確実で安全な方法。
- 公正証書遺言の作成には2人以上の証人が必要。
- 原本が公文書として公証役場に保管される。