協議書・契約書等の作成
形式上の注意点
協議書・契約書・示談書等の様式や構成は、当事者が自由に決めてかまいません。様式については、縦書き・横書きのどちらでもよく、用紙のサイズもまったく自由です。また、構成については、契約内容と当事者の署名押印さえあれば、それ以外の記載がなくても契約書の効力に問題はありません。
しかし、通常用いられている契約書は契約内容をなるべく分かりやすくするために、題名・前文・本文・後文・日付・署名押印の順で配列され、必要に応じて訂正印や捨印・契印が押され、印紙が貼られています。
そこで、ここでは、典型的な協議書・契約書・示談書等を作成するときの形式上の注意点について見ていきます。
題名
題名とは、その契約の内容を端的に表す名称で「○○契約書」などと書かれている部分です。題名は、「契約書」「協議書」「示談書」「和解書」「合意書」「覚書」「念書」など、どのようにつけてもかまいませんが、その契約内容をできるだけ明らかにしているものが望ましいといえます。たとえば、
- 契約書の場合
- 金銭消費貸借契約書
- 債務承認並びに弁済契約書
- 建物賃貸借契約書
- 不動産売買契約書・・・など
- 協議書・示談書・和解書・合意書・覚書・念書などの場合
- 離婚協議書
- 遺産分割協議書
- 遺留分減殺の合意書
- 不貞行為に基づく慰謝料の支払いに関する和解書
- 売買代金の分割払いに関する合意書
- 土地賃貸借の更新に関する覚書・・・など
このようにして、題名をつけるのが望ましいといえます。
前文
前文とは、契約の当事者や何についての契約であるかを明確にするために記載するものです。たとえば、売買契約書の場合は「買主Aを甲、売主Bを乙として、C商品の売買について次のとおり商品売買契約を締結する」と記載されている部分、離婚協議書の場合は「夫Aを甲、妻Bを乙として、両者間の離婚等に関し、本日以下のとおり合意する」と記載されている部分を指します。
本文
本文とは、契約の中核となる部分で、通常、契約の内容を第1条、第2条・・・というように適当な項目に分けて順に配列して記載していきます。
内容としてどのような条項を記載するかについては、契約の内容等により当然変わってきます。
後文
後文とは、契約が契約書記載の内容どおりに有効に成立したことを明らかにするために記載するもので、「上記契約の成立を証するため、本書2通を作成し、各自署名押印のうえ、その1通を所持する」というように、作成した契約書の通数などが書かれている部分のことです。
日付
日付は、契約の当事者全員が署名押印した日とするのが原則であり、その契約の効力は、契約書に特別な記載がない限り、その日付から始まります。
ただし、契約当事者全員の合意があれば、たとえば契約が前もって成立しているときや、逆に契約の効力の発生を先に延ばしたいときなどには、日付を遡及させて記載することも、また先日付で記載することもできます。
この場合は、当事者間では、その記載された日付から契約の効力が始まることになりますが、利害関係のある第三者には対抗できないこともありますので注意が必要です。
署名押印
協議書・契約書・示談書等は、契約当事者の意思に基づいて作成されなければその効力はありませんが、それを明らかにするために用いられるのがこの署名押印欄です。
署名があれば筆跡を確認することにより、また、押印があれば本人の印鑑が押してあることにより、本人の意思に基づいて作成されたものと推定することができるのです。
押印に使用する印鑑
押印に用いる印鑑は実印でも認印でもその効力に変わりはありませんが、本人の印鑑であることを立証するうえでは実印のほうがよいことは言うまでもありません。
契約当事者が法人の場合 |
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法人名と代表者であることの肩書を表示して、代表者が署名押印します。 |
代理人が契約する場合 |
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本人を表示して、代理人として代理人自身の署名押印をします。 |
訂正印・捨印・契印・割印
訂正印
訂正印は、協議書・契約書・示談書等の文字の間違いを訂正したり、加減したりするときに押すもので、訂正した箇所に直に押す方法と、欄外に「○字訂正」「○字削除」「○字挿入」などと書いてそこに押す方法があります。
捨印
捨印は、将来何らかの理由で契約書の文字が訂正される場合に備えて、訂正印として利用するためにあらかじめ欄外に押すものですが、この捨印を利用して勝手に協議書・契約書・示談書等の内容が書き換えられてしまうおそれもありますから注意が必要です。
契印
契印とは、協議書・契約書・示談書等の用紙が2枚以上になる場合に、それらが1つのものであることを証明するために押す印のことです。
- 後からページを抜き差しできないように、両ページにまたがって、1枚ごとに押印します。
- 協議書・契約書・示談書等に署名または記名押印した印鑑と同じ印鑑を使用します。
- 契約当事者が2人以上の場合は、全員が押印します。
- 「割印」とは異なりますのでご注意ください。
割印
割印とは、同じ協議書・契約書・示談書等を2つ以上作成した場合(例:正本と副本)に、それらが同一のもの、または関連のあるものだということを証明するために押す印のことをいいます。
つまり、契印と割印の違いは以下のとおりとなります。
契印 | 2枚以上の文書が1つの文書であることを証明する印 |
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割印 | 正本と副本のように2つ以上の文書の同一性、関連性を証明するための印 |
また、割印は、領収書を発行するときに領収書とその控えにまたがって押したり、同じ協議書・契約書・示談書等を2通作成した場合などにも使います。
印紙
契約書等の中には、印紙税が課されるものがあり、課税される文書と印紙税額は印紙税法により定められています。そのため、たとえば不動産売買契約書や請負契約書などを作成したときは、契約金額に応じて所定の印紙を貼らなければなりません。
納税義務者
印紙の納税義務者は、契約書等を作成した人で、たとえば売買契約書で売主・買主ともに押印していれば、双方が連帯して納税しなければなりませんから、印紙税の負担は、通常当事者間で双方折半と定めることが多いようです。
契約書の効力
仮に、印紙を貼っていなかったとしても契約書等の効力に影響はありません。
消印
契約書等に添付した印紙は、印紙と契約書にまたがって押印することにより消印をしなければなりません。