協議書・契約書等の作成
契約締結まで
まず、相手方を確定し、契約を締結してよいかを十分に見定める必要があります。その上で、想定されるリスクを回避できるような契約書を作成すべきです。その過程で、仮契約書の作成が有効なこともあります。
契約の相手方の確定と調査
たとえば、A(買主)がB(売主)との商品の仕入れに関する契約を締結しようとする場合について見ていきます。
まずは、取引の相手方が誰であるのかを確定させます。
- B自身が商品売買の相手方となるのか
- BはC(別の売主)とAとの仲介にすぎないのか
その他、代理などのケースもありますが、これらによって結ぶべき契約の内容が異なってきますので、まずは取引の相手方を明確にすることが大切です。
契約の相手方が個人の場合
契約の相手方が個人である場合は、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人でないことを確認すべきです。
未成年者 | 営業の種類や営業所等が商業登記簿中の未成年者登記簿に登記されていればよいのですが、これがない場合は、取引には親権者か未成年後見人の同意が必要になります。 |
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成年被後見人 被保佐人 被補助人 |
成年被後見人・被保佐人・被補助人であることは比較的少ないでしょうが、何らかの事情で疑わしい場合には、相手方に登記されていないことの証明書の提示を求めるか、この証明書を取得するための委任状をもらってこちらで同証明書を取得します(東京法務局への郵送等により)。 |
契約の相手方が法人の場合
契約の相手方が法人である場合は、法務局にて登記簿謄本を取得し確認します(登記簿謄本はインターネットからでも申請できます)。法人は定款または寄付行為に定められた目的(事業内容等)の範囲内で権利義務を負うとされていますが、登記簿謄本にはこの目的の記載がありますから、取引の内容がこの目的から大きく外れていないかを確認します。
また、実際に契約を締結する人に契約締結の権限があるのかも確認します。契約の締結者が、株式会社の代表取締役や公益法人の理事というような代表権を有する人かどうかを登記簿謄本で確認します。
契約が無効になる場合 |
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たとえば、
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契約上のリスクの把握
契約を締結する前に、その契約についてどのようなリスクが生じうるかを把握し、その上で、契約条項上でその手当てをしておくことも大切です。たとえば、
- 発注の方法
- 仕入価格の決定方法
- 売買契約はいつ成立するのか
- 発注後納入期日までの最低所要日数
- 代金の支払方法
- 返品ができるかどうか
- 契約期間中は一定量の発注義務を負うのか・・・など
このような、実際の取引の場面を想定しながら、起こりうるトラブルを未然に防ぐような契約条項を入れます。
掛取引を行う場合(売掛金債権が生じる場合)
掛取引を行い、売主として売掛金が生じることとなる場合は、相手方の信用調査が何よりも重要になります。契約の締結前に
- 登記簿謄本で所在地や資本金額などを確認する。
- 実際に訪問してみる。
- 同業者に評判を聞く。
などの方法により、できるだけ多角的に情報を収集するようにしてください。その上で、少しでも信用状況が悪くなった場合には、たとえば出荷を止められるような条項を盛り込むことなどが重要です。
損害賠償について
契約は、いったん締結すると双方の当事者を拘束します。そして、これに反した場合は、相手方から損害賠償を求められることになります。
この損害賠償額は、契約違反と相当の因果関係にあるすべての損害に及びますので、ときとしてかなりの高額になることもあります。そこで、契約上、損害賠償の額をあらかじめ定めておくこともよく行われています。
契約書と仮契約書
これまで見てきたように、契約書を作成するにあたっては、双方が想定しうるリスクを回避するための条項を盛り込むことが大切であり、そのために、当事者間で契約条項をめぐるやりとりが繰り返されることがあります。
そこで、お互いに契約を締結することを前提として、契約条項の内容については一定の範囲では合意できたが、まだ完全な合意に至っていないために本契約に至らないという段階で、仮契約書または覚書を作成してこれに署名捺印することがあります。このような書類の作成は、相手方の信用調査やリスクの査定に専門家のアドバイスを要するために時間がかかりそうなときなどにも、契約締結のチャンスを逃さず、円滑に本契約締結まで運ぶための手段として有効です。
なお、この仮契約書や覚書を作成する場合は、契約のどの部分が合意に至っているのかを明確にすることが重要です。