任意後見人になることができる人
任意後見人になるための資格
任意後見契約において、誰を任意後見人(任意後見受任者)に選任するかは、委任者(本人)の自由な意思に委ねられます。法律上も、任意後見人について特に資格を要求していません。
任意後見契約は信頼関係に基づく委任契約の一類型ですので、委任者(本人)が信頼できる人に受任者となってもらうことが望ましいでしょう。具体的には、信頼できる家族や友人等や、任意後見人は法律行為を職務内容としますので、行政書士や弁護士などの法律実務家、社会福祉士等の福祉の専門家が受任者となることが望ましいと言えます。
また、任意後見人は一人ではなく複数人でもよく、法人もなることができます。
任意後見契約の効力が生じない場合
家庭裁判所は、任意後見監督人の選任の申立てがあった場合において、任意後見契約において定められた任意後見受任者に特に不適切な事由がない限り、任意後見監督人の選任の審判をして任意後見契約の効力を発生させます。
このように、任意後見契約は任意後見監督人の選任により効力が生じますが、以下の場合には任意後見監督人は選任されず、任意後見契約の効力が生じなくなってしまいます。
任意後見受任者の不適任事由
任意後見受任者が次に掲げる者であるときは任意後見監督人は選任されません(任意後見契約の効力は生じません)。
未成年者
未成年者は、判断能力が未熟であるため、後見人として適切な職務の遂行を期待することができないからです。
家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人
かつて家庭裁判所で法定代理人、保佐人または補助人の地位を解任されたことがある者には、もはや任意後見人として適切な職務の遂行を期待することができないからです。
なお、ここでいう法定代理人とは、親権者や後見人などが含まれますが、以下記載の者も法定代理人であるとされています。
- 遺言執行者
- 家庭裁判所が選任した不在者の財産管理人および相続財産管理人
破産者
破産者は、自己の財産を喪失した者であり、他人の財産管理を職務の内容とする後見人としては適切な職務の遂行を期待することができないからです。
行方の知れない者
行方の知れない者が他人の財産管理等の職務を遂行することは不可能だからです。
本人に対して訴訟をし、またはした者及びその配偶者並びに直系血族
これらの者は、本人と利害の対立する関係にある者およびその近親者であるため、本人の利益の保護を目的とする後見人として適切な職務の遂行を期待できないからです。
不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
このような者には、本人の財産管理等を職務の内容とする後見人として適切な職務遂行を期待することができないからです。
任意後見受任者に不適任な事由が存した場合の効果
任意後見受任者に上記のような不適任な事由があるときは、家庭裁判所は任意後見監督人の選任の申立てを却下します。
その場合、任意後見契約は、あくまでも本人の意思に基づく委任契約の一種ですから、任意後見受任者に不適任な事由がある場合は、家庭裁判所が適任者であると思われる別の人を任意後見人として選任することはできません。
したがって、任意後見受任者に不適任事由があるために、任意後見監督人の選任申立てが却下された場合には、結局、当該任意後見契約は効力が生じないことになってしまいます。
このように任意後見受任者に上記(任意後見契約に関する法律4条3号)のような不適任事由が存する場合には、せっかく締結した任意後見契約が無駄になってしまいますので、任意後見受任者の選任に際しては、任意後見受任者に不適任な事由がないかどうかを十分に確認する必要があります。